震災列島

2005年5月10日 読書

ISBN:4062126087
単行本 石黒 耀
講談社 2004/10/20 ¥1,890


ジュラシックパーク以来
久しぶりに夢中になって読んだ

ジュラシックパークも
ハードカバーが積まれた瞬間
直感的に”これは読みだ!”と読んだが
この小説も同じように読み込んだ
一日で読み上げた

日本映画界の資金力じゃ、映画化しても
イマイチかもしれないけれど
ハリウッドが映画化してくれないかな・・・
などと妄想するが
日本の生の生活文化を背景によく分かっていないと
この小説のストーリーは理解できないのかもしれない

面白かった
科学的な表現や描写も圧巻だった
しかし
やっぱりエンターテイメント小説だ
今世間の関心ごとを無理やり凝縮しすぎている・・・

<<<<<ネタバレ注意>>>>>
地震に関するトピック
 震災法
 気象庁からの観測情報・予知情報などの取り扱い
 政府危機管理室の警戒宣言の取り扱い
  経済効果・政治的判断との兼ね合い

安全性(危機管理)に関するトピック
 免震構造は本当に大地震に耐えうるのか
 原発は大丈夫なのか
 大地震のとき人は整然と非難できるのか
 大地震に乗じたテロリストの可能性
 首都機能は東京に集中していて良いのか

経済政策に関するトピック
 大災害を契機をとしたバンクホリデー実施の可能性
 震災復興景気を視野に入れた地上げ

国際的パワーバランスの構造変化
 大災害を契機とした列強諸国の日本戦略

せっかくバンクホリデーというネタを仕込んであったが
あまりインパクトは大きくなかった。
震災直後にバンクホリデーを実施した際の
取り付け騒ぎ⇒暴動ぐらいの描写がほしかったけど・・・

また、中国・アメリカ・北朝鮮の動きもこの小説内で描いているが、あまり描ききれていない・・・
そのあたりは消化不良。
(続編を考えているのか?)

話の核をなす、地上げ屋やくざに復讐する地質屋のストーリーを描くため、娘が死に、妻が発狂するといったプロットを用いている。確かに、感情的にストーリーにのめりこむが、個人的には残酷すぎる点と、最期のエピローグの予定調和振りがあまりにも胡散臭く感じた(でも、それでこの小説の面白さがまったく台無しになったとは感じていない)。

また、何故か主人公とその親爺たちによって繰り広げられる、哲学的/倫理学的な議論は、確かに私の興味をそそる内容でかなり共感もできたが・・・おそらく私たちよりも若い世代が読むにはちょっと重たいと感じた。おそらく、第1と第2の団塊の世代が今の時代、誰もが一度は考えたことのあるオピニオンではあるが・・・。
この小説を純粋にパニックエンターテイメントとしていないのは、そういった様々な要素を詰め込みすぎているし、しかも描写が消化不良で終わっている感が否めないからだ。

とはいえ、はっきり言って地震に関する記述は凄まじい(興ざめだという意味では決してない)。圧倒される。途中で完全に理解することを放棄してしまったが、字面をガンガン読み進めていくのにのめり込んでしまった。
もともと、高校で地学を選択していた時期もあったため、基礎的知識があるから分かるという点もあったが、教科書や受験の際に必要となった地震の知識はおろか、最新の学説なども盛り込んで、大地震の想定される恐ろしさを冷酷に、そしてリアルに描きこんでいる。そして、それぞれの現象について、精緻にその発生機序を述べきっている。
知的エンターテイメントとしての、地震描写のシーンは読み応え十分であった。

また、想定東海地震を描くために名古屋をロケーションに選択しており、せりふの多くに名古屋弁が用いられていた。
それは、軽妙な感覚を、最初のうちは引き起こしていたが、徐々に地震が近づいていくにつれ、リアルな生活の一部を演出するトリックとなっていていた。

***** *****

このような小説のストーリーが
現実になって
多くの命が奪われる状況は
おきてほしくはない

しかし
大地震は歴史上
繰り返し起きている
そして
何故か
日本国民は
その繰り返し地震が起きている場所に
また
大都市を築き上げている

私は
いま
大都市に生きている

もし
大地震が起きたら
生き延びていたいと考えている

そこで
もしほかの人が生き延びる手伝いをできるのなら
生き延びたいと考えている

偶然の確率

2005年3月14日 読書
ISBN:4902088665 単行本 高橋 早苗 アーティストハウスパブリッシャーズ 2005/03 ¥1,470


継続は力なり を 確率論で証明してくれたりする。
なるほど
成功確率が低いものでも
何度も繰り返して行えば
いつかはきっと成功するのかぁ

でも
成功確率が低いと推定されるもので
たった1回の挑戦で成功する喜びってのもアリだから

Believerであるより
Dreamerであることを望む自分にナットク

信じるものは救われる が
夢見るものは やがて目が覚める

信じるのは辛いけど
夢見るのは心地よい

でも待てよ

夢を見続けるのも
成功確率を上げるってことかい?
この漫画は好きです。
臨床現場って、こんな漫画どおりではないですが
現場でおきている潜在的な社会問題を抽出すると
このようなストーリーで描けるのかなと思ったりします。

主人公の斉藤先生のようなドクターがいて
実際にストーリー上のような行動をとると
臨床現場は非常に混乱するでしょう。

またここに登場する患者さんたちも
現実にはいらっしゃらないような態度・対応・行動を
とっていると思います
(しかし、時としてこの漫画の中のような患者さんがいて
 しっかり社会問題としての臨床の問題を提起されるケースもあります)

しかし、繰り返しですが
ここで描かれている問題は、抽象的には現実の医療問題です。
設定が大学病院という特殊性があり、一般的な病院には
そのまま適応できないような問題であることも否めません。
また、テーマがマスコミなどで流布されている類で
もっと根本的に医療が抱えている、雑多な問題のほうが
より現実的な問題なのかもしれませんが
それでもなお、重要な問題のひとつであると考えます。

>NICU編
 割といいところをついているというDrの話を聞いたことがあります。
 オペを強行する場面などはドラマ(フィクション)だと思います。
 晩婚化、出産の人工的管理などが日本では進んでいますから
 それに伴い、トリソミートリプレットに関する問題は
 今後多く発生すると(私は)考えています。
 もし、現在30代前後の結婚していない(しようとしない)団塊の世代が子供を持ち始めるとしたら、
 社会的問題として浮上してくる可能性があると考えています。
 ここに、生前診断などの問題も絡んでくるでしょう。
 さらに、そこに中絶の問題も絡んでくるのかも知れません。
 少子化が今以上に進めば、皮肉なことですが、それほど問題にならないのかも知れません(そのとき、問題は老年期に対する医療保障費用の拠出問題が極めて深刻になり、そこに焦点がおかれるでしょうから)。

>がん編
 告知。承認が進まない抗がん剤。治験。ホスピス。
 ストーリー展開は、おそらく読者を最後までひきつけるためにある程度カタルシスのあるものにしていますが
 私の知っているガンとの闘病生活は、もっと凄惨を極めているものが多いですから(もちろん、ストーリー以上に係わった家族・スタッフがカタルシスを感じた闘病のいきさつも知っています)
 少しだけ、物足りない感じもしますが
 (特にガンにまつわる)医療現場に触れたことのない方々が読む分には十分なのかな・・・とも感じます。

 私がガンになったら、家族は告知を望まないでしょう。
 しかし、いろんな例を知っているだけに、何がなされるかによって、大体の自分の状況はわかるでしょう。
 そのとき、私は治療を望まないでしょう(ただし、発生場所と、それがオペ適応だと言われたら考えますが)。

>精神科編
 今進行中ですね。
 私が実習で精神科病棟に行ったとき
 担当の先生も「今、精神科は患者さんをできるだけ囲い込もうとしているのよ」といっていたのを覚えています
 いえ
 囲い込もうとしているのは病院だけではないとも感じましたが。
 このストーリーを読んでいると
 「差別」そのものの性質を考えてしまいます。
 「差別をなくそうとする活動」そのものが
 「差別を助長する」というパラドックス。
 極めて哲学的な問題だと思います。

 地球環境を訴える行政は、実はもっとも多くのペーパーを産出している
 ペットボトルリサイクル処理をする業者が、儲けを出すためにわざわざ大型トラックで何百キロも先の処理場に噴煙を撒きながら運搬する
 電気問題を解決するための核エネルギー利用には多大なるリスクが伴う

 問題解決への思考そのものをもっと掘り下げて理解しなければいけないのかなと考えます
 考えをつきつめていけばどこかでギブアップしたくなり
 「所詮、人間は排出したり、消費するからだめなんだ」
 と諦観論に跳躍してしまうのですが

 おそらく、性善説と性悪説の中間にある地点に落ち着かせる
 知恵と工夫、寛容さと厳粛さが人間にはあると信じたいのです。

 さて、話は戻って、ストーリーは今後どんな展開を見せるのでしょうか
 出来れば、何かしら問題解決の糸口となるような示唆を与えてくれるエンディングであれと祈りながら
 読み進めていくとしましょう・・・

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