峠越え

2007年5月31日 from my heart
僕は見知らない街でバスに乗った
そこにもごく普通に学生がいて
たわいのないおしゃべりと
居眠りがあって

僕にはまったく関係ない生命の
その息吹
身近に感じながら想像する

彼らが学校で受ける授業
友達から教わる出来事
今日食べた食事の映像
これから帰ってすべきことの数

僕は
もう年齢を重ねすぎて
彼ら彼女たちの過ごしている
若い日々をはるか
それだからこそいっそ
彼ら彼女たちの若き日々の
頭の中の働きなんかに
気持ちが向いてしまう

その頭の中に浮かぶ
よしなしごとは
いったい
どれくらい僕の想像を超えているのだろう
どれくらい僕が知りえないことなのだろう

彼は何を喜んでいるのだろう
彼女はどうしてうつろなのだろう
停留所を降りて迎えに来た家族を見て
緩んだ表情
彼女はその安らぎをどこから得ているのだろう

東京ではほぼありえない日常の流儀
バスの往来が日常の軸である生活
そんな生活
僕にはなかった

僕は
一体何を知っているのだろう
もしみんなと同じことを知っているなら
その同じことは一体どういう意味があるのだろう
同じことを知っていることと
同じとが実は違うと指摘できることは
どちらが大切なのだろう

もし正しいことが分かってても
みんなが分からなければ
それは正しいことにならないのだろう

だとしたら
みんなが知っていることを正しいと考えるほうが
きっと
ずっと楽だろう

でも
それを軸に生きていって
僕は満足するのだろうか

山は深い闇に包まれていて
春先だというのに肌寒い
現実の中にあるこの感覚が
まどろみに近い逡巡を忘れさせて

僕はまた
一人ぽっちで歩いていくより
ほかなかった

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