強奪

2001年8月16日
照りつける日差しの中に
おまえが
おどろいたように振り返っていた
そうさ
おれがここにいるなんて
おまえは考えもしなかっただろう

行き交う人々の無関心さの中で
一つの視線にさらされた少女の
唇と頬は
同じぐらい紅く染まっていた

唐突な巡り会い
瞬時に連なる心音
息が止まる感覚
予想だにしない
愛を突きつけられるスクリーンのヒロイン

悪役はにやりと笑って
大切なものを奪っていく決まりになっている
大股で一歩踏み込み
おまえのもとにスライドしていく
一つの欲望にかられた魂の入れ物

風が
止まって
二人が
重なって
他の誰も
その大事件に
気づかなかった・・・

強く奪い去っていく
罪深い肉体の炎
あてがわれた唇の先から
そそぎ込まれる身勝手な愛情

それでも
その愛が真実である限りに
女は
女としての受容を
形容しがたい内からの
湧きあがってくる一つの音を契機として
しっとりと重ねていく・・・


やがて巻きおこる
どよめきと歓声

逃走に向かう二人は
モラルという鎧を着飾った
警備員たちに追われていく

華やかな一瞬
奇想天外なドラマ
スクリーンに一番に映っているのは
エキセントリックな心のつながりに
燃えたぎっている二つの性の化身・・・

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