もっとも長く続いた愛の歌

文明がかつて一度滅びた
そして
母なる地球には過去よりも高度化した
新たなる文明が発祥し
まったく予想もつかない姿で発展をなした

過去に埋もれたDNAの断片を再構築し
その中からくみ上げられていく情報を
生命体の一部として
不可視のエネルギーとしてつながり合わせていった

　覚醒したクローンブレインのまばゆい
　意識の輝きの中で彼は夢を見ていた
　その時代の巨万の富と引き換えになる
　膨大な経験と内省の知識情報を
　機械的なアウトプットソースのシグナルにのせ
　尽きることなく脈絡もなく踊るように
　次々と
　送り出していく・・・
　彼は永遠に夢を見ている
　”目覚しいほどの知識遺産の源泉”と
　皆は驚異の眼差しと驚嘆のため息をつく

彼は
　五つの異なる言語の運動と法則の知識を持っていた
彼は
　強力な感情の波が押し寄せ引いていく記憶を持っていた
彼は
　物理的・非物理的両方の感覚意識の記憶を持っていた
彼は
　神を知っていて神を信じながら神を裏切り神に絶望した記憶を持っていた
彼は
　法則に従った世界が法則に従わなくなる法則についての記憶を持っていた
彼は
　生命と非生命の両方の存在意識の記憶を持っていた
彼は
　彼にまつわる彼と同じ仲間との一体感と孤独感の記憶を持っていた
彼は
　彼がどこから来たかそしてどこへ行くのか分かっていながらそれを忘れた記憶を持っていた

　それら
　何よりも
　もっとも
　みなが
　不可思議な眼差しで
　憧れの気持ちを持ち
　眺めていたのは

　彼の
　　謎めいた
　　　数百にも
　　　　連なっている
　　　　　愛の歌の
　　　　　　メモリー